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コラム 「 とかちの窓から 」Column

(2006年2月11日配信)

第18回 『4ナイ落ち穂拾いーマラセチアについて』

 こんにちは。とかち皮膚科院長・とかち美白研究所所長の大石真暉です。

 昨年末、前年の年賀状を整理していたら、大学の医局時代の知り合いの方からの年賀状に、「今年のキーワードは?」と書いてあったのを見つけました。

 『そういえば毎年予想しているけど当たったためしがないな。2005年は何だかんだいっても、ここ数年の中では落ち着いていたけど、心配性の自分としては2006年はすんなりとはいかず、乱れそうだな。』と思いました。そして今年のキーワードは『乱』として年賀状を出しました。(新年早々縁起でもないと思いましたが、例年、逆になることが多く、半分冗談のつもりでした。)

 そしてご存じの通り、今年はいきなり年初から荒れ気味です。毎度のことですが、時代の寵児としてもてはやされた人物が、掌を返したように攻撃されています。今年は様々なリスクを考え慎重に行動していきたいと思います。

 とかち美白研究所では、VCローションを購入されている方に会報を毎月発行しております。そこの片隅に『ニキビ治療の4ヶ条(4ナイ)』というものを載せています。
(思い当たる所があれば今日から早速実行してみて下さい。)

  • (1)爪を切っていじらナイ
  • (2)髪の毛で隠さナイ
  • (3)夜更かししナイ
  • (4)乾燥させナイ
 

これは私が皮膚科診療を15年やってきた中で非常に重要と思い標語にしたものです。

 ニキビ治療には様々な治療方法があり考え方も様々です。このコラムでは、昨年まで『ニキビ治療の4ヶ条(4ナイ)』を系統立てて解説してきました。

 第16回からは『4ナイ落ち穂拾い』と題して、『4ナイ』を『基本中の基本(中核)』と考え、日々気付いたニキビ治療に関連したこと一つ(今まで取り上げていなかったが重要なことなど= 落ち穂 )にフォーカスをあて(= 拾い )、お話させていただいています。本題に入る前に、ジャン・フランソワ・ミレー(1814ー1875)の名画『落ち穂拾い』(1857年)オルセー美術館所蔵をご覧下さい。
http://www1.megaegg.ne.jp/~summy/gallery/glaneuses.html

 『4ナイ』にはありませんが、ニキビの原因として一般に知られていないものがあったとしたら、それを見過ごすことはできません。

 管理人さんより、「長年のニキビが実はマラセチアだった」「なかなかニキビが治らなくて病院を変えたらマラセチアだったことが判明した」という報告があり、『マラセチア』について取り上げて下さいという御要望がありました。そこで今回は『マラセチア』を取り上げたいと思います。

 ニキビと似ている『マラセチア』というカビが原因の病気は、正式名称は『マラセチア毛包炎』といいます。

 「皮膚にカビがいる!?」ちょっと驚かれる読者の方もいらっしゃるでしょう。皮膚の表面には細菌以外にも様々な微生物がいて、実はカビ(真菌)も常在しています(常在菌)。

 毛穴に皮脂が詰まり、皮膚の常在菌による作用で炎症が起き、赤く腫れたり化膿して膿がたまると『赤ニキビ』になります。

 『マラセチア(malassezia)』というカビが多量に存在するときに引き起こされる毛穴の炎症が『マラセチア毛包炎』です。

( 症 状 )
 赤くてやや光沢があり、特に胸や背中、肩、腕に出ているブツブツは、実はニキビではなく『マラセチア毛包炎』であることがあります。ちょっと、汗ばむ季節になると見られることが多いですね。

 普通のニキビと違い、赤いブツブツ(紅色丘疹)は均一な感じで、表面が滑らか(平滑)です。また、好発部位が頚部や体幹であることから判別することができます。ニキビと違って押してもつぶせない、中身がでないのも大きな特徴です。しかし、実際、見ただけで診断が難しいことも多いです。

( 診 断 )
 通常のにきびと診断されても治りにくい場合には、『マラセチア毛包炎』を疑って検査することが最も重要です。診断は、膿や角質を取り薬で染めて、顕微鏡で直接マラセチアがいるか否か確認します。

( 治 療 )
 治療は抗真菌剤の内服と外用薬及びイオウカンフルローションが有効です。内服薬は高価なので、私は主として抗真菌剤の外用やイオウカンフルローションを使用しています。

( 注 意 点 )
 この病気は再発することもあります。皮膚に常在しているマラセチアというカビが原因であり、いくら薬を塗ったりしてもこれらのカビを全てなくすことは出来ないためです。

 この病気は「かびが増えやすいような高温多湿の生活条件」や「汗をかき易い・脂性等の個人の体質」が関係しているといわれています。

 入浴時に良く身体を洗い、清潔に保つ。また、乾燥させるということが、カビの増殖の抑制に重要です。

 顔面に出る場合もありますので、女性の場合は、メイクをしたまま汗をたくさんかかないようにしましょう。汗をかいたら、洗顔して化粧直しをこころがけると良いでしょう。脂分の多い下地乳液類は避けましょう。ヘアケア剤が残る首すじにも出やすいので、よく洗い流しましょう。

( 余 談 )
 ちょっとここからは余談となります。

 この病気は熱帯でよく見られる病気とされていました。また、以前、夏期ざ瘡といわれた日光浴後のニキビは、高温でmalasseziaが発育することによって起きる『マラセチア毛包炎』のことではないかと言われています。

 私がこの病気を本当に意識し出したのはここ数年のことです。当地は夏季は最高気温が30度以上を記録しますが、特にここ数年は記録回数が増加してきています。冬は子供の頃は零下30度というのがありましたが、最近はせいぜい零下20度といったところで、そのかわり降雪量が増えています。昔は雪が降ると珍しく、嬉しかったのものでした。でも最近ではゲンナリといった感じです。

 この病気は皮膚科医の間ではトピックスとして取り上げられることが多くなっています。北海道でもこの病気が普通に見られるようになったことは、地球温暖化のひとつの傍証になるのではないでしょうか。

 また、こんな状況ですから皮膚科医の中には、この病気を実際みていない先生も多数いらっしゃる可能性があります。(特に形成外科医の先生が皮膚科を標榜している場合。)

 読者の方が自分でこの病気を疑った場合、担当の皮膚科の先生に「これはマラセチアではないのですか?」といきなりやると角が立ちますので、『健康関係の雑誌で、ニキビと似ているマラセチアという特集がありました。体に出ているニキビが治りにくい場合は、マラセチアかどうかは顕微鏡で調べたらわかるとあったのですが、私の場合は全くの見当はずれなのでしょうか?』とやんわりと切り出すのはどうでしょうか?

 私は、ニキビの治療をするときは、『マラセチア毛包炎』のこと念頭に入れて治療することが重要だと思っています。

 今回のポイントは以下の通りです。

 
  • 【今回の4ナイ落ち穂拾い】 「落ち穂 その3」
  • 【マラセチア毛包炎】
  • ■ニキビと似ている『マラセチア毛包炎』というカビが原因の病気が最近話題になっています。
  • ■赤くてやや光沢があり、特に胸や背中、肩、腕に出ているブツブツが普通のニキビの治療をしてもよくならない場合はこの病気を疑います。
  • ■診断は、膿や角質を取り、顕微鏡で直接マラセチアの有無を確認します。
  • ■治療は抗真菌剤の内服、外用、イオウカンフルローションが有効です。
  • ■一旦良くなっても再発することがあります。入浴時に良く身体を洗い、清潔に保ち、乾燥させることも大切ですよ。

 全国的にインフルエンザが流行ってきているようですね。早寝早起きの規則正しい生活は、インフルエンザ予防にもなりますし、ニキビの改善にも効果があります。日も少しずつ長くなり、春はもうそこまできています。頑張りましょう。

 それでは。

おおいし まさき(大石 真暉:ペンネーム)
(昭和41年北海道帯広市生まれ。平成6年札幌医大大学院修了。
平成7年同皮膚科学講座助手。平成9年とかち皮膚科開院。
平成14年とかち美白研究所開所。
日本皮膚科学会認定皮膚科専門医・医学博士)

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